ターゲットを絞ると売上が上がる理由|選ばれる仕組みを理解する

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こんな人にオススメの記事

  • 自社製品・サービスが「万人向け」だと考えていて、営業に苦戦している経営者
  • 広告を出してもレスポンスが薄い、単価が下がっている感覚をお持ちの方
  • ターゲット設定の重要性は聞いたことがあるが、実際にどう変わるのか知りたい方
  • ペルソナやセグメンテーションという言葉は知っているが、自社では形式的になっている気がする方
  • 中小企業だからこそ「ニッチ戦略」で勝つ方法を学びたい経営者・マーケター

この記事の目次

導入文

「うちの製品は誰にでも使ってもらえます」

マーケティングの相談を受けているとき、中小企業の経営者からこの言葉をよく聞きます。確かに、技術や品質が高ければ、いろいろな人に使ってもらえるかもしれません。でも、その考え方は営業活動になると落とし穴になってしまいます。

実は、ターゲットを絞った企業ほど、売上が伸びやすい構造になっています。この記事では、なぜターゲットを絞るだけで売上が変わるのか、その仕組みを解説します。「自社のお客さんは本当に誰なのか」を見つめ直すことで、売上は大きく変わります。

本文

1. 「全員に売る」戦略が失敗する理由

#### メッセージが拡散する、その結果誰にも届かない

ターゲットを決めないまま営業活動やマーケティングをすると、どんなことが起きるでしょうか。

極端な例を考えてみます。B to Cの小売店舗があったとします。「当店は老若男女、誰でもお客さん」という前提で営業を始めたとします。そして、すべての世代に向けて広告を出し、すべてのニーズに対応する品揃えをしようとします。

結果、何が起きるか。広告の予算は細切れになり、各世代に対するメッセージが薄くなります。店舗の品揃えは広くなりますが、誰かの「好き」になることがない。SNSで話題になることもなければ、特定の顧客層に「この店は自分たちのための店だ」という感覚も生まれません。

これが「全員に売ろうとすると、誰にも売れない」という現象です。

用語メモ メッセージの拡散(Diffusion): ターゲットを限定せずに伝えたいメッセージが、多くの人に広く薄く届く状態を指します。マーケティング用語では、特定の対象に深く刺さるメッセージの対義語として使われます。

#### 心理学から見る「選択」と「決定」

ここで心理学の知見をひとつ挙げます。人が何かを選ぶとき、選択肢が多いほど決定が難しくなり、満足度も下がるという「選択のパラドックス」という現象があります。

これは購買行動にも当てはまります。あなたが何か商品を買おうと思ったとき、「これは万人向けです」というメッセージの商品と、「このサービスは、子育てで忙しいお母さんの時間を取り戻すために設計されました」というメッセージの商品があったら、どちらに心が動きやすいでしょうか。

後者のほうが、「あ、私のことだ」と感じやすく、購買決定が速いはずです。なぜなら、自分事化しやすいから。そして、それは信頼感にもつながります。「このサービスを使っている人たちの気持ちが分かるんだな」と感じるから。

2. ターゲティングとポジショニングの基本

#### ターゲティングとは「選ぶ」こと

ここで用語を整理しておきましょう。

ターゲティングは、自社の製品やサービスを最も必要とする顧客層を「選ぶ」プロセスです。市場全体の中で、「こういう人たちに最優先で使ってもらいたい」という層を特定することです。

ターゲティングは、決して市場を分割する学術的な作業ではなく、経営判断です。「限られたリソース(人員、予算、時間)で最大の効果を出すために、どこに注力するか」を決めるのがターゲティングです。

用語メモ ターゲティング: 市場全体から、自社の製品・サービスに最も親和性の高い顧客層を特定し、そこに経営リソースを集中させるプロセスです。BtoBでもBtoCでも、営業やマーケティング戦略の出発点になります。

#### ポジショニングは「立ち位置」を決めること

ターゲティングで「誰に売るか」を決めたら、次は「その人たちの中での自社の立ち位置」を決めます。これがポジショニングです。

例を挙げます。高級エスプレッソマシンのメーカーがあるとします。ターゲットは「本格的なコーヒーにこだわるカフェオーナー」だとします。その中でも、「毎日の忙しい営業の中でも品質を妥協しない」という点を重視し、「耐久性と最小限の操作で本格的なエスプレッソを淹れられる機械」というポジションを取ったとします。

すると、そのポジショニングに共感するオーナーは、多少高い価格でもその製品を選びます。なぜなら、「自分たちが大切にしている価値観を理解してくれている」と感じるから。

ターゲティングとポジショニングは、セットで機能します。

用語メモ ポジショニング: ターゲット市場での相対的な立ち位置を定めることです。競合との違い、提供する価値、ブランドイメージなどを統合して、顧客の心の中での「この企業はこういう存在」というポジションを作ります。

3. 「絞る=顧客を失う」という誤解

#### なぜ経営者は絞ることに抵抗を感じるのか

ターゲッティングの話をすると、多くの経営者は抵抗を感じます。その理由は「顧客を絞る=売上の機会を失う」という恐れです。

気持ちはよく分かります。「いま以上に顧客を制限したら、売上が下がるのでは」と思うのは自然です。

でも、ここが大きな誤解です。

ターゲットを絞ることは、顧客を失うことではなく、「集中力を高める」ことです。むしろ、ターゲットを明確にすることで、適切でない顧客層(あなたの会社の製品では満足度が低くなる人たち)へのアプローチを減らし、相応しい顧客へのアプローチを強化するのです。

#### 「相応しくない顧客」との関係は疲弊する

ここに、もう一つの視点があります。

あなたの製品が「万人向け」で、その結果、本来の顧客ではない層まで営業活動の対象にしていたとしましょう。その層は、あなたの製品の本当の価値を理解していません。価格で選ぶ、ブランドの知名度で選ぶ。そして、購入後の満足度も低い。

その結果、顧客対応のコストは上がり、クレームの頻度も増える。売上を作るために使うエネルギーが増加する一方で、利益率は下がる。これは、本来あるべき事業の形ではありません。

一方、ターゲットを絞ったら、どうなるか。あなたの製品の価値を本当に理解する人たちにだけ売ります。その人たちは、購入後の満足度が高く、再購入率も高い。そして、友人に「いい製品を見つけた」と紹介してくれます。

つまり、ターゲットを絞ることで、顧客は「増える」可能性が高いのです。

4. 絞ることで起きる好循環

#### メッセージが明確になる

ターゲットを決めると、伝えるべきメッセージが明確になります。

「子育てで忙しいお母さんの時間を取り戻すために設計されました」というメッセージと、「誰でも使える多機能です」というメッセージ。どちらが心に刺さるでしょうか。

前者のほうが、その対象の人が「あ、これは私のためのサービスだ」と感じるはずです。その感覚が、購買決定を速め、満足度も高めます。

#### メッセージが刺さる

メッセージが明確になると、次に起きるのが「刺さる」という現象です。

マーケティングの世界では、「メッセージが刺さる」というのは、「自分事化する」という意味です。提供者の視点ではなく、受け手の視点から見た「自分の問題、自分の夢、自分の価値観に直結している」という感覚が生まれる。

その結果、その顧客層の間でロコミが生まれやすくなります。SNSで自発的に紹介される。「あ、友人にもぴったりだ」という感覚から、紹介が生まれる。

これが、ターゲットを絞ることの最大のメリットです。

用語メモ ロコミ(Word of Mouth): 顧客が自発的に製品やサービスについて友人や知人に伝えることを指します。広告よりも信頼性が高く、コスト効率も優れています。ターゲット明確化により、ロコミが生まれやすくなります。

#### 紹介が生まれる、その結果顧客が増える

ロコミが生まれると、紹介経由の顧客が増えます。紹介経由の顧客は、既存顧客と似たようなニーズや価値観を持つ人たちです。その結果、その新規顧客もまた満足度が高く、再購入率が高く、また他の人に紹介してくれる。

この好循環が、ターゲット明確化の真の効果です。

つまり、ターゲットを絞った結果、顧客数は減るどころか増えていく。ただし、それは広告による客数増ではなく、紹介による質の高い客数増です。利益率も高い。コストも低い。

5. ペルソナ設計のやり方と注意点

#### ペルソナとは「仮想顧客」のこと

ターゲティングを実際に進めるとき、よく使われるツールが「ペルソナ」です。

ペルソナは、あなたが最も大事にしたい顧客像を、より具体的に設定したものです。架空の人物だけれど、実在する人のようにリアルに作ります。年齢、職業、年収、生活スタイル、悩み、夢、価値観、媒体習慣(何で情報を得ているか)。そうしたディテールをまとめます。

ペルソナを持つメリットは、社内の共通認識が生まれることです。営業チーム、企画チーム、製品開発チーム。それぞれが「このペルソナに満足してもらうために、何をするか」を考えるようになります。その結果、意思決定の軸が揃い、組織全体の動きが一致します。

用語メモ ペルソナ: ターゲット層の中でも最も典型的で重要な顧客像を、より詳細に描写したものです。年齢、職業、ライフスタイル、悩みなどの属性情報と心理情報を統合して作られます。

#### ペルソナ設計のステップ

実際にペルソナを作るときのステップを、簡単に説明します。

ステップ1:データを集める 既存顧客の属性データ、購買履歴、顧客との会話記録。あるいは、インタビューなど、定性的な情報。こうしたものを集めます。

ステップ2:パターンを見つける 集めたデータの中で「共通するパターン」を見つけます。「この年代の人たちは、こういう悩みを持つ傾向がある」というようにです。

ステップ3:仮想顧客を設定する 見つけたパターンをもとに、架空だけれどリアルな顧客像を作ります。「田中花子、42歳、マーケティング部長。毎日の業務で部下の育成に悩んでいる」というように、具体的に。

ステップ4:組織で共有する 作ったペルソナを、営業、企画、製品開発など、関わる全部署で共有します。定期的に見直しも大切です。

#### ペルソナ設計で気をつけるべきポイント

ペルソナ設計でよくある失敗が、「形式的になる」ことです。

ペルソナを作ること自体が目的になり、その後、実際の営業やマーケティング活動で使われていない。という状況です。ペルソナは「意思決定の軸」であり、組織全体で何度も参照され、活用されてこそ意味があります。

もう一つの注意点は、「ペルソナに執着しすぎる」ことです。ペルソナは、あくまで参考値です。実際のお客さんは、ペルソナ通りではありません。定期的に「今のお客さんは、実はこういう層に変わっているのでは」という検証が大切です。

6. 中小企業に適したターゲット戦略

#### 大企業と異なる「絞る」の意味

大企業と中小企業では、ターゲティング戦略が異なります。

大企業は、複数のターゲット層に対して、複数の製品ラインを持つことができます。その中で各製品は「ターゲットを絞る」戦略が効きます。

一方、中小企業は、限られたリソース(製品数、営業人員、予算)の中で事業を展開しています。その中で「ターゲットを絞る」というのは、単なるマーケティング戦略ではなく、生存戦略です。

中小企業こそ、ターゲットを徹底的に絞る必要があります。なぜなら、限られたリソースを集中させることで、初めて大企業と競争できるから。

#### ニッチ市場の強さ

「ニッチ市場」という言葉があります。大市場ではなく、小さな市場。その小さな市場で、ナンバーワンになる戦略です。

中小企業は、大市場で大企業と競争するのではなく、小さくても自分たちが大切にできるニッチ市場を見つけます。例えば、「全国のお客さん」ではなく「地元の若いお母さんたち」に絞る。「全ての職種」ではなく「医療従事者向けのコンサルティング」に絞る。

その市場では、中小企業が大企業よりも、顧客に近い位置から、より柔軟に対応できます。

用語メモ ニッチ市場: 大市場ではなく、小さくても充分な需要がある限定的な市場のことです。中小企業が大企業と競争を避けて、むしろ競争優位を持ちやすい市場となります。

#### 地域密着戦略の有効性

中小企業のもう一つの強みが「地域密着」です。

全国展開を考えるのではなく、地元のコミュニティの中で信頼を構築する。地元の新聞、地元のイベント、地元の人間関係。こうしたアナログなチャネルで、顧客と深い関係を作る。

この戦略は、大企業には難しい。大企業は規模を求めるから。でも、中小企業は「地元で信頼されている」という資産を持つことで、簡単には競争相手になられない市場を作れます。

7. 実例|絞って成果が出た構造

#### 事例1:建築サービスの場合

地域の工務店があったとします。もともと「新築から修繕まで、ご相談ください」というメッセージで営業していました。結果、営業は広く浅く、単価は低い状況でした。

ターゲティングを実施し、「30代から40代で、子育てを始めた世代向けの、環境配慮と家族とのコミュニケーションを重視した注文住宅」という限定的なポジションに絞りました。

その結果、メッセージが明確になり、SNSでの発信も具体的になった。その発信を見た、同じような価値観を持つ層から問い合わせが増えた。むしろ新築だけに絞ったのに、結果的に修繕の相談も増えた。なぜなら「この工務店は子育て世代を大事にしている」という信頼が生まれたから。

売上は、かつての1.5倍になった。

#### 事例2:飲食サービスの場合

ラーメン屋の例を挙げます。もともと「誰でも来てください」という店舗運営をしていました。結果、顧客が分散し、営業時間も長く、従業員の負担は大きく、利益率は低い状況でした。

ターゲットを「会社帰りで疲れたビジネスパーソン」に絞りました。メニューもシンプルにし、営業時間も夜間に限定し、内装も「大人の空間」にリデザインしました。

その結果、顧客層が明確になり、スタッフの対応も洗練された。顧客の回転率も上がり、営業時間が短くなったのに売上は増えた。利益率も向上した。ロコミで「疲れた日に行く店」として認識が定着した。

どちらの例でも、共通する構造があります。ターゲットを絞る → メッセージが明確になる → 不要な業務や顧客が減る → スタッフの負担が減り、集中力が高まる → サービス品質が向上する → 顧客満足度が上がり、ロコミが生まれる → 結果的に売上が増える。

まとめ

ターゲットを絞ることで売上が上がる理由を、整理してまとめます。

  • 「全員に売る」は「誰にも売れない」に繋がる理由は、メッセージが拡散し、顧客が自分事化しないから
  • ターゲティングは経営判断であり、限られたリソースを最大活用するプロセス
  • ポジショニングはターゲット内での立ち位置を定め、競合との差別化を実現
  • 「絞る=顧客を失う」は誤解で、むしろ適切でない顧客層との疲弊を減らし、相応しい顧客層への集中を高める
  • 絞ることで生まれる好循環は、メッセージの明確化 → 顧客の自分事化 → ロコミ → 質の高い新規顧客増加
  • ペルソナは「仮想顧客」として、組織全体の意思決定軸になる。形式的にならず、定期的な検証が大切
  • 中小企業こそターゲット明確化が生存戦略であり、ニッチ市場や地域密着で大企業との差別化が可能
  • 実例から見える構造は、絞る → 専門性が高まる → 顧客満足度向上 → ロコミ × 利益率向上という相乗効果

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