「デザインのことがわかる人が社内にいない」「マーケティングをやりたいけれど、誰に任せればいいかわからない」――こうした悩みを抱える中小企業の経営者は少なくありません。
かつて、中小企業にとってクリエイティブは「あれば嬉しいけれど、なくても困らないもの」だったかもしれません。しかし、WEBサイトがビジネスの第一印象を決め、SNSで企業の姿勢が問われる時代において、クリエイティブの力はもはや「あったら良いもの」ではなく「なくてはならないもの」に変わりつつあります。
この記事では、なぜ今中小企業にクリエイティブ人材が必要なのか、そしてその人材をどう確保すればよいのかを解説します。
そもそも「クリエイティブ人材」とは誰のことか
クリエイティブ人材の幅広い定義
「クリエイティブ人材」と聞くと、多くの方はデザイナーやイラストレーターを思い浮かべるのではないでしょうか。もちろんデザイナーもクリエイティブ人材の一つですが、それだけではありません。
クリエイティブ人材とは、企業の価値を「見える形」にする力を持った人材の総称です。具体的には、以下のような役割が含まれます。
- ブランドストラテジスト:企業のブランド戦略を設計する人
- WEBディレクター:WEBサイトの企画・設計・進行管理を行う人
- グラフィックデザイナー:ロゴ、パンフレット、名刺などのデザインを行う人
- WEBデザイナー/エンジニア:WEBサイトのデザインや構築を行う人
- コピーライター:企業やサービスの魅力を言葉で表現する人
- マーケター:市場調査や集客施策を立案・実行する人
用語メモ
ブランドストラテジスト:企業のブランドが目指す方向性を定め、それを実現するための戦略を設計する専門家です。企業の強みや顧客の期待、競合との差別化ポイントなどを分析し、ブランドの核となるメッセージやビジュアルの方向性を導き出します。
中小企業に必要なのは「T型人材」
大企業であれば、上記の役割をそれぞれ専門の部署や担当者が担います。しかし中小企業では、そこまで細分化された人員配置は現実的ではありません。
中小企業が本当に必要としているのは、一つの専門分野に深い知識を持ちながら、隣接する分野にも幅広い理解を持つ「T型人材」です。たとえば、デザインの専門性を軸にしながら、マーケティングの基礎知識もあり、ブランディングの視点でアドバイスもできる――そんな人材がいれば心強いでしょう。
しかし、このT型のクリエイティブ人材は市場でも希少であり、中小企業が採用するのは非常にハードルが高いのが現実です。
クリエイティブ人材が必要とされる3つの理由
理由1:第一印象がデジタルで決まる時代
取引先の選定、採用活動、商品購入――あらゆる場面で、人は最初にWEBサイトを見ます。自社のWEBサイトが古かったり、デザインが洗練されていなかったりすると、それだけで「この会社は大丈夫だろうか」と不安を与えてしまう可能性があります。
WEBサイトは、24時間365日働く「デジタル上の営業担当者」です。その営業担当者の身だしなみを整え、適切な言葉で語りかけるためには、クリエイティブの力が欠かせません。
WEBサイトを訪れたユーザーがそのサイトに留まるかどうかは、わずか数秒で判断されると言われています。その数秒の印象を左右するのが、デザインやコピーといったクリエイティブの力です。
理由2:「良いものを作れば売れる」時代の終わり
多くの中小企業は、製品やサービスの品質には絶対の自信を持っています。しかし残念ながら、品質が良いだけでは選ばれにくい時代になっています。同じような品質の競合がたくさんいる中で、いかに自社の独自性を伝え、共感を得るかが勝負の分かれ目です。
この「伝える力」を担うのがクリエイティブです。良い商品を作る力と、良い商品を伝える力は、まったく別のスキルセットです。製造現場の職人さんがどれだけ優れていても、それを市場に届けるための「伝える職人」がいなければ、宝の持ち腐れになりかねません。
理由3:採用・ブランディングの競争激化
人手不足が深刻な中小企業にとって、採用活動は経営の最重要課題の一つです。そして今、求職者は応募前に必ず企業のWEBサイトやSNSをチェックします。
洗練されたWEBサイト、魅力的に発信されている企業のビジョン、活き活きとした社員の姿――これらはすべてクリエイティブの力によって生み出されるものです。大企業に比べて知名度で劣る中小企業だからこそ、クリエイティブの質が採用力を大きく左右するのです。
クリエイティブ人材の採用が難しい理由
そもそも人材が不足している
デジタル化の進展により、クリエイティブ人材の需要は急増しています。WEBデザイナー、UIデザイナー、マーケターなどの求人は常に多く、慢性的な人手不足の状態です。
特に地方の中小企業にとって、この問題は深刻です。クリエイティブ人材は都市部に集中する傾向があり、地方で優秀な人材を見つけること自体が大きなハードルとなっています。
求めるスキルの幅が広すぎる
先述の通り、中小企業が求めるクリエイティブ人材は、一つの専門分野だけでなく幅広いスキルを持つT型人材です。ブランディングの知見があり、デザインもできて、WEBの技術にも詳しく、マーケティングの視点も持っている――そんな人材は市場にほとんどいません。
仮にいたとしても、そのような高いスキルを持つ人材は相応の報酬を求めます。年収600万円から1,000万円クラスの人件費は、中小企業にとって大きな負担です。
用語メモ
T型人材:アルファベットの「T」の形になぞらえた表現で、一つの専門分野に深い知識を持ち(Tの縦棒)、かつ周辺領域にも広い見識を持つ(Tの横棒)人材のことです。クリエイティブ領域では、デザインを軸にマーケティングやブランディングも理解している人材などが該当します。
採用しても定着しにくい
仮にクリエイティブ人材の採用に成功したとしても、次の壁が待っています。それは「定着」の問題です。
クリエイティブ人材にとって、成長できる環境や刺激を受けられる仲間の存在は非常に重要です。社内にクリエイティブのチームがなく、一人で孤軍奮闘する状況では、モチベーションの維持が難しくなります。結果として、数年で転職してしまうケースも珍しくありません。
採用コスト、教育コスト、そして離職のリスク――これらを総合的に考えると、クリエイティブ人材を正社員として雇用することが本当にベストな選択かどうか、慎重に判断する必要があります。
「雇う」以外の選択肢としての共創
外部パートナーとの共創で得られるもの
クリエイティブ人材を正社員として雇用することが難しいのであれば、発想を転換して「外部パートナーと共創する」という選択肢を検討してみましょう。
共創パートナーとの協業によって、以下のようなメリットが得られます。
- 多様な専門性へのアクセス:一人の社員では持ち得ない、チーム全体の知見を活用できる
- コストの最適化:フルタイムの人件費ではなく、必要なタイミングで必要な分だけ投資できる
- 第三者視点の獲得:社内だけでは気づけない課題や強みを発見できる
- 最新のトレンドやノウハウ:常に複数の案件に携わるプロの最新知識を活かせる
外部パートナーとの共創は、「人材が雇えないから仕方なく」という消極的な選択ではありません。むしろ、専門チームの力を丸ごと活用できるという点で、正社員一人を雇用するよりも大きな戦力になる可能性があります。
「丸投げ」ではなく「一緒に考える」
ここで一つ大切なポイントがあります。外部パートナーに「丸投げ」するのと「共創する」のは、まったく違うということです。
丸投げでは、自社の想いや文化が成果物に反映されにくくなります。一方、共創では経営者や担当者もプロセスに参加し、パートナーと一緒に方向性を考え、意思決定をしていきます。
「クリエイティブのことはわからないから全部任せたい」と思うかもしれません。しかし、自社のビジネスや顧客のことを最もよく知っているのは、ほかならぬ自社の皆さんです。その知見とパートナーの専門性を掛け合わせるからこそ、本当に価値のあるアウトプットが生まれるのです。
共創パートナーを選ぶときのポイント
戦略から制作まで一貫して任せられるか
クリエイティブの仕事は、戦略立案→コンセプト開発→デザイン制作→運用改善と、上流から下流まで一連の流れで進みます。この流れが分断されると、戦略とデザインがちぐはぐになったり、当初の意図が途中で失われたりしてしまいます。
共創パートナーを選ぶ際には、「何を作るか」だけでなく「なぜ作るか」から一緒に考えてくれるパートナーを選ぶことが重要です。ブランディングの上流工程から、WEBサイトや販促物の制作、さらには運用までを一気通貫で対応できるかどうかを確認しましょう。
自社の業界に精通しているかよりも「引き出す力」があるか
「うちの業界のことをわかっている制作会社がいい」と思うかもしれません。業界知識はもちろん大切ですが、それ以上に重要なのは「引き出す力」です。
優れた共創パートナーは、丁寧なヒアリングとワークショップを通じて、企業が自覚していない強みや魅力を引き出すことができます。業界の知識は後から学べますが、この「引き出す力」は簡単には身につきません。
相性とコミュニケーションの質
共創は長期的なパートナーシップです。技術力や実績だけでなく、「この人たちと一緒に仕事をしたいか」という相性も大切な判断基準です。
初回の打ち合わせで、こちらの話をしっかり聞いてくれるか、わかりやすい言葉で説明してくれるか、一方的に提案を押しつけてこないか――こうしたコミュニケーションの質を見ることで、共創パートナーとしての適性を判断することができます。
まとめ
中小企業にクリエイティブ人材が必要な理由と、その確保の方法について解説してきました。ポイントを整理します。
- クリエイティブ人材とは、デザイナーだけでなく、企業の価値を「見える形」にするすべての専門家を指す
- デジタル時代の第一印象、差別化、採用力強化のために、中小企業にもクリエイティブの力が不可欠
- 人材不足、スキルの幅広さ、定着の難しさから、正社員採用は中小企業にとってハードルが高い
- 外部パートナーとの「共創」は、多様な専門性とコスト最適化を実現する有効な手段
- 共創パートナーを選ぶ際は、一気通貫の対応力、引き出す力、コミュニケーションの相性を重視する
「クリエイティブの力で自社の価値をもっと伝えたい」「でも専門人材を雇う余裕がない」――そんなお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度私たちmotiveにご相談ください。ブランディング、WEB制作、マーケティングまで、御社の共創パートナーとしてお力添えいたします。