WEB制作会社にホームページの制作を依頼する際、契約書を交わすことになります。しかし「契約書の内容を隅々まで読んで理解した上でサインしている」という経営者は、実はそれほど多くありません。「制作会社を信頼しているから大丈夫」「専門的でよくわからないから任せよう」——そうした気持ちは理解できますが、契約内容を把握しないまま進めると、後になって思わぬトラブルに発展することがあります。この記事では、WEB制作の契約書で特に確認すべきポイントを、実際に起こりやすいトラブル事例とともに解説します。
なぜ契約書の確認が重要なのか
口約束はトラブルのもと
WEB制作の現場では、打ち合わせの際に口頭で「ここはサービスで対応しますよ」「修正は何度でも大丈夫です」といったやりとりが交わされることがあります。しかし、口約束は証拠が残りません。後になって「そんなことは言っていない」と言われれば、それまでです。
契約書は、お互いの認識を文書として「見える化」するものです。契約書があるからこそ、双方が安心してプロジェクトを進められるのです。信頼関係があるからこそ、書面でもしっかり確認する——これが健全なビジネスの在り方です。
よくあるトラブルの例
契約書の確認不足が原因で発生しやすいトラブルには、以下のようなものがあります。
- 制作したホームページの著作権が制作会社にあり、制作会社を変えたくてもデザインデータをもらえない
- 修正が「2回まで」と契約書に書かれていたのに確認しておらず、追加費用が発生した
- 納品後の保守費用が想定以上に高かった
- 契約を解除したいが、違約金の条項があり簡単にはやめられない
- ドメインやサーバーの名義が制作会社のままで、自社で管理できない
トラブルの多くは「契約前に確認していれば防げたもの」です。サインする前にこの記事のチェックポイントを確認してください。
著作権と所有権の確認
著作権は誰のものか
用語メモ
著作権とは、創作物(デザイン、文章、写真、プログラムなど)を作った人に自動的に発生する権利です。WEB制作においては、デザインやコードの著作権が誰に帰属するかが重要なポイントになります。
WEB制作において、原則として著作権は「制作した人(制作会社)」に帰属します。つまり、お金を払って作ってもらったホームページのデザインやソースコードであっても、契約書に特段の定めがなければ著作権は制作会社のものです。
これは意外に感じるかもしれませんが、法律上はそうなっています。著作権の帰属を御社にしたい場合は、契約書に「制作物の著作権は納品をもって発注者に譲渡する」等の条項を入れてもらう必要があります。
所有権・使用権の違い
著作権の譲渡が難しい場合でも、「使用権(利用許諾)」を得ることは可能です。確認すべきポイントは以下の通りです。
- 著作権の帰属:著作権は御社に譲渡されるのか、制作会社に残るのか
- 使用権の範囲:サイト公開後のデザインの利用範囲(WEB以外の媒体への転用は可能か)
- デザインデータの納品:デザインの元データ(PhotoshopやFigmaのファイルなど)は納品されるのか
- ソースコードの納品:HTMLやCSS、JavaScriptなどのコードは納品されるのか
将来、制作会社を変更する可能性も考慮して、デザインデータやソースコードを受け取れるかどうかは特に重要です。
修正回数と追加費用の取り決め
修正回数の上限を確認する
制作過程でデザインやテキストの修正が発生するのは当然のことです。問題は、その修正が「どこまで見積もりに含まれているか」です。
契約書で確認すべきポイントは以下の通りです。
- デザインの修正は何回まで含まれるか
- テキストの修正は何回まで含まれるか
- 「修正」と「変更(仕様変更)」の線引きはどこか
- 修正回数を超えた場合の費用はいくらか
たとえば「デザイン修正2回まで」という契約の場合、3回目以降の修正には追加費用がかかります。「気に入るまで何度でも直してもらえる」わけではないので注意が必要です。
追加費用が発生する条件を明確にする
追加費用が発生するケースとその金額の目安は、契約書や見積書に明記してもらいましょう。以下のような場合に追加費用が発生することが一般的です。
- 当初の仕様にないページやコンテンツの追加
- 承認後のデザインの大幅な方向転換
- 制作途中での仕様変更
- 素材(写真・テキスト)の御社側からの提供が遅れたことによるスケジュール延長
「追加費用が発生する条件」を契約前に明確にしておくことが、金銭トラブルを防ぐ最大のポイントです。
納品物の範囲を明確にする
「納品」とは具体的に何を指すのか
「ホームページの納品」と一口に言っても、その範囲は契約によって異なります。確認すべき納品物のリストは以下の通りです。
- WEBサイト本体:サーバーにアップロードされた状態のサイト
- デザインデータ:デザインの元ファイル(Photoshop、Illustrator、Figma、XDなど)
- ソースコード一式:HTML、CSS、JavaScript、PHPなどのファイル
- 画像・素材データ:サイトに使用した写真やイラストの元データ
- マニュアル・操作手順書:WordPressの管理画面の使い方など
- 各種アカウント情報:サーバー、ドメイン、WordPress管理画面、アナリティクスなどのログイン情報
特にデザインデータとアカウント情報は、将来的にサイトの修正や制作会社の変更が必要になった際に不可欠です。
ドメインとサーバーの名義
見落としがちですが非常に重要なのが、ドメインとサーバーの契約名義です。
用語メモ
ドメインとは「example.co.jp」のようなWEBサイトの住所にあたるものです。サーバーはサイトのデータを保管する場所です。どちらも年間費用を支払って利用します。
ドメインやサーバーの契約が制作会社の名義になっていると、制作会社との関係が悪化した場合や制作会社が廃業した場合に、サイトにアクセスできなくなるリスクがあります。原則として、ドメインとサーバーの契約名義は御社名義にしておくことをおすすめします。
保守・運用契約の確認
保守契約の内容と費用
サイトの納品後、保守・運用のための月額費用が発生するケースがほとんどです。保守契約の内容は制作会社によって異なりますので、何が含まれているかを具体的に確認しましょう。
- WordPress本体・プラグイン・テーマの更新作業
- 定期バックアップの取得と管理
- セキュリティ監視と対応
- 軽微なテキスト修正や画像差し替え(月に何回まで、何時間まで等)
- サーバー・ドメインの管理
- アクセス解析レポートの提供
- トラブル発生時の対応
月額費用の相場は、一般的に5,000円〜30,000円程度です。含まれるサービス内容によって大きく異なりますので、「月額○円で何をしてくれるのか」を具体的に確認してください。
保守契約の解約条件
保守契約の解約条件も重要です。以下を確認しましょう。
- 最低契約期間はあるか(例:1年間の縛り)
- 解約はいつまでに申し出る必要があるか(例:1か月前、3か月前)
- 解約時に違約金は発生するか
- 解約後のデータの取り扱いはどうなるか
保守契約は「入口」だけでなく「出口」の条件も必ず確認しましょう。
知っておきたい契約のトラブル事例
事例1:制作会社を変えたらサイトが使えなくなった
A社は制作会社B社にホームページを制作してもらいました。数年後、B社の対応に不満を感じ、C社に乗り換えようとしました。ところが、B社との契約では著作権がB社に帰属しており、デザインデータも提供されませんでした。さらにドメインとサーバーがB社名義だったため、サイトのデータを移管することもできず、結局ゼロからサイトを作り直すことになりました。
教訓:著作権の帰属、デザインデータの納品、ドメイン・サーバーの名義は契約前に必ず確認しましょう。
事例2:修正のたびに追加費用が膨らんだ
D社はWEBサイトの制作を依頼し、100万円の見積もりで契約しました。しかし、制作過程でデザインの修正を何度か依頼したところ、その都度「追加費用」として請求され、最終的に150万円を超える金額になりました。D社は「修正は当然含まれているもの」と思っていましたが、契約書には「修正は2回まで」と明記されていました。
教訓:修正回数の上限と追加費用の条件は、契約書に明記されているか事前に確認しましょう。
事例3:解約したいのにできない
E社は月額の保守契約を結んでいましたが、ほとんどサービスを利用していないため解約したいと考えました。しかし契約書を確認すると「最低契約期間3年」「中途解約の場合は残期間分の費用を一括で支払う」という条項がありました。
教訓:保守契約の最低契約期間と中途解約の条件は必ず確認しましょう。
契約前のチェックリスト
最低限確認すべき項目
WEB制作の契約書にサインする前に、以下の項目を確認してください。
- 制作物の著作権は誰に帰属するか
- デザインデータ・ソースコードは納品されるか
- ドメイン・サーバーの契約名義は御社か
- 修正回数の上限と追加費用の条件
- 納品物の具体的な範囲
- 制作スケジュールと納期
- 支払い条件(着手金・中間金・完了金の割合と支払い時期)
- 保守契約の内容・費用・期間・解約条件
- 秘密保持に関する取り決め
わからないことは遠慮なく質問する
契約書の内容に不明な点があれば、遠慮なく制作会社に質問してください。質問に対して丁寧に説明してくれる会社は、信頼できるパートナーと言えます。逆に、質問を嫌がったり、曖昧にしたりする会社には注意が必要です。
まとめ
WEB制作の契約書で確認すべきポイントを振り返ります。
- 口約束ではなく、契約書で認識を「見える化」することが重要
- 著作権の帰属は契約書に明記してもらい、可能であれば御社への譲渡を取り決める
- デザインデータ・ソースコード・アカウント情報が納品されるか確認する
- ドメインとサーバーは御社名義にする
- 修正回数と追加費用の条件を事前に把握する
- 保守契約は内容だけでなく、解約条件(最低期間・違約金)も確認する
- わからないことは契約前に質問し、納得してからサインする
契約書の確認は面倒に感じるかもしれませんが、御社のWEBサイトという大切な資産を守るために不可欠なステップです。少しの手間をかけることで、将来の大きなトラブルを防ぐことができます。契約内容についてのご不安やご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。