WEBサイトの制作は、御社と制作会社の共同作業です。企画の打ち合わせ、デザインの確認、原稿のやりとり、修正依頼、スケジュールの調整――公開までに膨大なコミュニケーションが発生します。このやりとりの進め方次第で、プロジェクトの進行スピードや仕上がりの品質が大きく変わります。
もし現在、制作会社とのやりとりをすべてメールで行っているなら、プロジェクト管理ツールの導入で大幅に効率化できる可能性があります。本記事では、WEB制作で使われる代表的なツールの特徴と、ツール選びのポイントをわかりやすくご説明します。
メールだけでやりとりするリスク
情報が埋もれて対応漏れが起きやすい
メールは仕事のコミュニケーションとして最も一般的な手段ですが、WEB制作のようにやりとりの量が多いプロジェクトでは、さまざまな問題が発生しやすくなります。
最も多いのが「情報の埋もれ」です。1通のメールに複数の確認事項が書かれていると、一部だけ対応されて残りが見落とされるケースがあります。また、メールの受信トレイには日々大量のメールが届くため、制作に関する重要なメールが他のメールに紛れてしまうこともあります。
メールのやりとりが100通を超えると、「この修正はいつ依頼したか」「最新の確認済みデザインはどれか」を探すだけで大きな時間ロスになります。
認識のズレが生まれやすい
メールでは、やりとりの「文脈」が見えにくくなります。長いメールチェーンの途中から参加したメンバーは、過去の経緯がわからず、同じ質問を繰り返してしまうことがあります。
また、「了解しました」という返信が「すべてOK」なのか「一部だけOK」なのかが曖昧になったり、添付ファイルの最新版がどれなのかわからなくなったりと、認識のズレが蓄積されていきます。
引っ越しにたとえるなら、電話だけで引っ越し業者とやりとりするようなもの。荷物のリストも間取り図もなく口頭だけで進めると、当日になって「聞いていなかった」というトラブルが起きるのと似ています。
進捗の「見える化」ができない
WEB制作は複数の工程が同時に進むため、「今、全体のどこまで進んでいるのか」を把握することが重要です。しかし、メールではプロジェクト全体の進捗を俯瞰することが困難です。
「デザインの確認は終わったのか」「原稿はどのページまで入稿されたのか」「次に自分がやるべきことは何か」――こうした情報がメールの中に散らばっていると、不安やストレスの原因になります。
メールは「連絡手段」としては優れていますが、プロジェクトの「管理手段」としては不十分です。やりとりの量が増えるWEB制作では、専用のツールを活用することで生産性が大きく向上します。
WEB制作でよく使われるプロジェクト管理ツール
Backlog(バックログ)|課題管理に強いツール
Backlogは、日本企業のヌーラボ社が提供するプロジェクト管理ツールです。WEB制作会社が最もよく使うツールの一つで、特に「課題管理」(タスクの登録・進捗管理)に優れています。
Backlogでは、「トップページのデザイン修正」「会社概要の原稿確認」といった個別のタスクを「課題」として登録し、担当者・期限・進捗状況をひと目で管理できます。一つの課題に対してコメントをやりとりできるため、メールのように話題が混在することがありません。
画面は日本語対応で直感的に操作でき、ITに詳しくない方でも比較的すぐに使い始められます。ファイルの共有やガントチャート(工程表)の表示機能も備えています。
用語メモ
ガントチャート:プロジェクトの各作業を横棒グラフで表した工程表のこと。開始日・終了日・進捗が一目でわかるため、スケジュール管理に広く使われています。
Chatwork(チャットワーク)|手軽なチャットコミュニケーション
Chatworkは、日本発のビジネスチャットツールです。メールよりも気軽にメッセージを送れるのが最大の特徴で、「確認しました」「承知しました」といった短い返答も、メールほど堅苦しくなく送ることができます。
制作プロジェクト用のグループチャットを作成し、関係者全員でやりとりを共有できます。ファイルの送受信やタスク機能(簡易的なToDoリスト)も備えています。
メールとの最大の違いは「リアルタイム性」です。チャットならではのスピード感で、ちょっとした確認や質問をすぐに行えるため、プロジェクトの進行が滞りにくくなります。
Slack(スラック)|高機能なチャットツール
Slackは、世界中で広く使われているビジネスチャットツールです。Chatworkと同様のチャット機能に加えて、外部サービスとの連携(Google DriveやBacklogとの接続など)が充実しているのが特徴です。
「チャンネル」と呼ばれるテーマ別の会話スペースを作成でき、「#デザイン」「#コンテンツ」「#スケジュール」のように話題を整理できます。IT業界での利用率が高いため、制作会社から提案されることも多いツールです。
ただし、機能が豊富な分、使い始めの操作に少し慣れが必要です。制作会社がSlackを提案してきた場合は、基本的な使い方を教えてもらうとよいでしょう。
ファイル共有とドキュメント管理のツール
Google Drive(グーグルドライブ)|ファイル共有の定番
Google Driveは、Googleが提供するオンラインのファイル保存・共有サービスです。WEB制作では、原稿、写真素材、デザイン案、参考資料など、さまざまなファイルのやりとりが発生しますが、これらをGoogle Drive上のフォルダにまとめて管理できます。
メールの添付ファイルでは「どれが最新版かわからない」という問題が起きがちですが、Google Driveなら常に最新のファイルが共有フォルダに入っているため、混乱が起きにくくなります。
また、Googleドキュメント(ワープロ機能)やGoogleスプレッドシート(表計算機能)を使えば、原稿や修正リストを制作会社と同時に編集することもできます。15GBまで無料で利用可能です。
Dropbox(ドロップボックス)|大容量ファイルに強い
Dropboxも、Google Driveと同様のファイル共有サービスです。特にデザインデータや動画など、大容量のファイルを扱う場合に便利です。
制作会社によっては、デザインの確認用データをDropbox経由で共有するケースもあります。Google Driveと機能は似ていますが、使い勝手やファイルの同期速度に違いがあるため、制作会社が使っているサービスに合わせるのが効率的です。
ファイル名のルールを決めておく
どのツールを使う場合でも、ファイル名の付け方を事前に決めておくことが重要です。「デザイン案.pdf」「デザイン案_最新.pdf」「デザイン案_修正済み_最終版.pdf」のように名前が増殖していくと、どれが本当の最新版かわからなくなります。
おすすめは、日付をファイル名に含めるルールです。「20260316_トップページデザイン_v2.pdf」のように、「日付_内容_バージョン」の形式で統一すると、新旧の判別が容易になります。
ファイル管理のルールは、プロジェクト開始時に制作会社と一緒に決めておくと、後々のトラブルを防げます。小さなことですが、プロジェクト全体の効率に大きく影響します。
ツール選びのポイント|自社に合ったものを選ぶには
制作会社が使っているツールに合わせるのが基本
プロジェクト管理ツールを選ぶ際、最も効率的なのは制作会社が普段使っているツールに合わせることです。制作会社はそのツールの使い方に慣れており、テンプレートや運用フローも整っているため、スムーズにプロジェクトを進められます。
「うちの会社はITに詳しくないから、新しいツールは不安だ」と感じるかもしれません。しかし、多くの制作会社は、お客様がツールに不慣れであることを前提に、丁寧にサポートしてくれます。最初に操作方法を教えてもらい、わからないことはその都度質問すれば問題ありません。
使いやすさと必要最低限の機能で選ぶ
高機能なツールが必ずしも最適とは限りません。普段パソコン操作にあまり慣れていない方がSlackを使おうとすると、機能の多さに戸惑ってしまうかもしれません。
WEB制作のやりとりで最低限必要な機能は、「メッセージのやりとり」「ファイルの共有」「タスクの管理」の3つです。この3つがシンプルに使えるツールを選べば十分です。
ChatworkやBacklogは日本語対応が充実しており、日本の中小企業にとって使いやすい選択肢です。無料プランや無料トライアルがあるツールも多いので、まずは試してみることをお勧めします。
社内のメンバーへの共有も考慮する
WEB制作に関わる社内メンバーが複数いる場合(たとえば、社長、営業部長、広報担当など)、情報共有のしやすさも重要な選定基準です。
チャットツールやプロジェクト管理ツールを使えば、制作会社からの連絡や確認事項を関係者全員がリアルタイムで把握できます。「営業部長にも確認してもらえますか?」というやりとりが、ツール上ですぐにできるのは大きなメリットです。
メールの場合、CCに入れ忘れたり、転送を忘れたりして情報が一部のメンバーに届かないことがありますが、ツールなら参加メンバー全員に自動的に情報が共有されます。
ツールを効果的に活用するための運用ルール
プロジェクト開始時に「やりとりのルール」を決める
ツールを導入しただけでは、すぐに効率化されるわけではありません。プロジェクト開始時に、以下のような運用ルールを制作会社と一緒に決めておきましょう。
連絡の基本ツール:日常のやりとりはChatwork、課題管理はBacklog、ファイル共有はGoogle Driveなど、用途ごとのツールを明確にする。
返信の目安時間:確認依頼への返信は原則2営業日以内、急ぎの場合はチャットで一報を入れるなど、対応スピードの目安を共有する。
緊急連絡の手段:サイトの重大な不具合など緊急時の連絡は電話にするなど、緊急度に応じた連絡手段を決めておく。
「1メッセージ1トピック」を心がける
チャットツールを使う際は、1つのメッセージに1つの話題だけを書くことを心がけましょう。メールの癖で、1通のメッセージに複数の確認事項を書いてしまうと、一部だけ返答されて残りが見落とされるリスクがあります。
「トップページの画像について」「会社概要のテキストについて」「公開日のスケジュールについて」のように、話題ごとに分けてメッセージを送ると、制作会社も一つずつ確実に対応できます。
確認・承認のフローを明確にする
WEB制作では「誰がOKを出したら次の工程に進めるか」を明確にすることが重要です。デザイン案の承認は社長が行うのか、担当者が行うのか。修正依頼は一人がまとめて出すのか、各自が個別に出すのか。
この承認フローが曖昧だと、「社長はOKだったのに担当者からやり直しの指示が入った」「複数の人から矛盾する修正依頼が来た」といった混乱が生じます。プロジェクト管理ツール上で承認の記録を残すことで、こうした問題を防ぐことができます。
まとめ|ツールを活用してプロジェクトをスムーズに進めよう
WEB制作は御社と制作会社の共同プロジェクトです。やりとりの質を高めることで、仕上がりの品質もスケジュールも大きく改善されます。
- メールだけのやりとりは情報の埋もれ、認識のズレ、進捗の不透明さを招きやすい
- Backlog(課題管理)、Chatwork・Slack(チャット)、Google Drive(ファイル共有)が代表的なツール
- 制作会社が使い慣れたツールに合わせるのが最も効率的
- 「使いやすさ」と「必要最低限の機能」で選べば、ITに詳しくなくても使いこなせる
- プロジェクト開始時に連絡ルール・ファイル命名規則・承認フローを決めておく
- 「1メッセージ1トピック」で、対応漏れを防ぐ
ツールの活用に不安がある場合は、制作会社に遠慮なく相談しましょう。使い方を丁寧にサポートしてくれる制作会社こそ、良いパートナーだと言えます。WEB制作の進め方やコミュニケーションについてお悩みがあれば、お気軽にお問い合わせください。