ホームページの新規制作やリニューアルを検討する際、制作会社に「どんなホームページを作りたいのか」を伝える必要があります。しかし、口頭や簡単なメールだけで要望を伝えると、制作会社との間で認識のズレが生じ、「思っていたものと違う提案が返ってきた」「各社の提案内容がバラバラで比較できない」という事態に陥りがちです。そこで活用したいのが「RFP(提案依頼書)」です。RFPと聞くと大企業向けの難しい書類に感じるかもしれませんが、中小企業でもポイントを押さえれば簡単に作成できます。この記事では、RFPの基本的な意味から、書くべき項目、構成例、良いRFPと悪いRFPの違いまで、具体的にお伝えします。
RFP(提案依頼書)とは何か
まず、RFPの基本的な意味と、なぜ作成するべきなのかを理解しましょう。
RFPの基本的な意味
RFPとは「Request For Proposal」の略で、日本語では「提案依頼書」と訳されます。簡単にいえば、「こんなホームページを作りたいと考えています。御社ならどのように実現しますか? 提案と見積もりをお願いします」という内容を文書にまとめたものです。
たとえるなら、家を建てるときに工務店に渡す「要望書」のようなものです。「4人家族で住む家がほしい。部屋は4LDKで、リビングは20畳くらい。予算は○○万円以内で、来年の3月までに入居したい」という情報がまとまっていれば、工務店は的確な提案をしてくれますよね。逆に「いい感じの家を建てて」とだけ伝えたら、どんな提案が返ってくるかわかりません。RFPは、ホームページ制作における同様の「要望書」です。
用語メモ
RFP(Request For Proposal=提案依頼書)は、IT業界やWEB制作の分野で広く使われている文書です。発注者(御社)が自社の要望をまとめて制作会社に提示し、それに基づいて制作会社が提案・見積もりを行うという流れで使われます。
RFPを作成するメリット
RFPを作成することには、いくつかの大きなメリットがあります。
メリット1:自社の要望が整理される
RFPを書く過程で、「ホームページで何を実現したいのか」「誰に向けたホームページなのか」「予算はいくらまで出せるのか」といった要素を自ら整理することになります。この整理作業自体が、プロジェクトの成功に大きく貢献します。
メリット2:制作会社の提案を比較しやすくなる
複数の制作会社に同じRFPを渡すことで、「同じ条件に対して各社がどのような提案をしてくるか」を比較できます。RFPがなければ、各社に伝える内容がバラバラになり、公平な比較ができません。
メリット3:認識のズレを防げる
口頭で「こんな感じにしてほしい」と伝えるだけでは、細かいニュアンスが正確に伝わらないことがあります。文書として残しておくことで、後から「言った・言わない」のトラブルを防ぐことができます。
メリット4:制作会社の実力を見極められる
RFPに対する提案の質を見れば、その制作会社が御社の課題をどれだけ深く理解し、どれだけ具体的な解決策を持っているかがわかります。優れた制作会社は、RFPの内容を踏まえた上で、御社が気づいていない課題や可能性についても提案してくれるはずです。
RFPは「制作会社に良い提案をしてもらうための道具」です。完璧な文書を作る必要はありません。まずは御社の要望を整理して文書にすることが大切です。
RFPに書くべき項目
ここからは、RFPに盛り込むべき具体的な項目を一つずつ解説します。すべての項目を埋める必要はありませんが、情報が多いほど制作会社は的確な提案をしやすくなります。
プロジェクトの背景と目的
RFPの冒頭には、「なぜホームページを制作(またはリニューアル)するのか」という背景と目的を記載します。これがRFPのもっとも重要な部分です。
背景の例:「現在のホームページは5年前に制作したもので、スマートフォン対応ができておらず、デザインも古くなっている。また、お問い合わせフォームが使いにくいというお客さまの声もある」
目的の例:「新規顧客の獲得強化。とくに、ホームページからのお問い合わせ数を現在の月5件から月15件に増やしたい」
目的はできるだけ具体的に記載しましょう。「かっこいいホームページにしたい」ではなく、「ホームページからの問い合わせを増やしたい」「採用応募を増やしたい」「ブランドイメージを刷新したい」など、ビジネス上の目標として表現することが大切です。
ターゲットユーザー
ホームページの主な閲覧者(ターゲット)について記載します。ターゲットが明確であるほど、制作会社はデザインや構成の方向性を定めやすくなります。
記載する内容としては、ターゲットの年代・性別・職業、ターゲットが抱えている課題や悩み、ターゲットがホームページに求める情報、などがあります。
たとえば、「群馬県内の30〜50代の経営者で、自社のホームページをリニューアルしたいと考えている方」のように、できるだけ具体的に書きましょう。
必要なページ・機能
ホームページに必要なページ構成と機能をリストアップします。確定していなくても、現時点での想定で構いません。
ページ構成の例:トップページ、会社概要、事業内容(3ページ)、実績紹介、スタッフ紹介、ブログ(お知らせ)、お問い合わせ
必要な機能の例:お問い合わせフォーム、ブログ更新機能(WordPress)、Googleマップの埋め込み、採用情報の掲載、SNSとの連携
「このページは絶対に必要」「このページはあれば嬉しい」という優先度も記載しておくと、予算との調整がしやすくなります。
用語メモ
ページ構成とは、ホームページにどのようなページを用意するかの全体設計のことです。「サイトマップ」とも呼ばれます。ランディングページ(LP)とは、WEB広告などからユーザーが最初にたどり着くページのことで、商品・サービスの訴求に特化した1ページ完結型のページを指すことが多いです。
RFPに書くべき項目(続き)
前のセクションに続いて、RFPに記載すべき重要な項目を解説します。
予算
予算については、「制作会社に金額を決めてほしい」と考える方も多いかもしれません。しかし、予算の目安を伝えることは非常に重要です。
予算がわからなければ、制作会社は「100万円の提案をすべきか、300万円の提案をすべきか」判断できません。結果として、御社の予算に合わない提案が返ってくるリスクがあります。
正確な金額でなくても、「100万円〜150万円程度」「200万円以内」のような範囲で構いません。月額の運用費用についても、「月額○万円以内を想定している」と記載しておくとよいでしょう。
なお、予算を伝えると「その金額いっぱいの見積もりが出てくるのでは」と心配される方もいますが、誠実な制作会社であれば、予算内で最大の効果を出す提案をしてくれます。むしろ、予算を伝えないことで認識のズレが生じるリスクの方が大きいです。
スケジュール
希望する公開時期と、その理由を記載します。
記載例:「2026年9月末までに公開したい。10月に自社の展示会があり、その前にホームページを刷新しておきたいため」
公開時期に明確な期限がある場合は、その理由も書いておくと、制作会社がスケジュールの優先順位を判断しやすくなります。「できれば早く」という曖昧な表現ではなく、具体的な日付を記載しましょう。
また、RFP提出後のスケジュール感として、「提案の締め切り」「プレゼンテーションの日程」「選定結果の通知時期」なども併記しておくと親切です。
選定基準と提出物の指定
制作会社を選ぶ際の評価基準を事前に示しておくと、制作会社は「何を重視してアピールすべきか」がわかります。
選定基準の例:提案内容の具体性、デザインの方向性、実績(同業種の制作経験)、スケジュールの実現性、費用の妥当性、公開後のサポート体制
提出物の指定の例:企画提案書、概算見積書、スケジュール案、制作体制(担当者の紹介)、類似の制作実績
これらを明示しておくことで、各社の提案を同じ基準で公平に比較できるようになります。
RFPの構成テンプレート
実際にRFPを作成する際の構成テンプレートをご紹介します。この構成に沿って情報を埋めていくだけで、必要十分なRFPが完成します。
基本構成の例
以下は、中小企業がホームページのリニューアルを依頼する場合のRFPの基本構成です。
1. 会社概要:社名、事業内容、所在地、従業員数、主要な商品・サービス
2. プロジェクトの背景と目的:なぜリニューアルするのか、どのような成果を期待しているか
3. 現状のホームページの課題:現在のURL、現在の課題や不満点
4. ターゲットユーザー:主な閲覧者の属性、ニーズ
5. 希望するページ構成・機能:必要なページ、実装したい機能
6. デザインの方向性:参考にしたいサイト、ブランドイメージ
7. 予算:初期費用と月額運用費の目安
8. スケジュール:希望する公開時期とその理由
9. 選定基準:提案を評価する際の重視ポイント
10. 提出物と提出期限:何をいつまでに提出してほしいか
11. 連絡先:担当者の氏名、メールアドレス、電話番号
書き方のコツ
RFPを書く際に意識していただきたいコツをいくつかご紹介します。
完璧を目指さない:すべての項目を詳細に埋める必要はありません。わからない項目は「未定」「制作会社からの提案を希望」と記載すれば大丈夫です。RFPは「完璧な指示書」ではなく、「対話のきっかけ」です。
ビジュアルで伝える:デザインの方向性を言葉だけで伝えるのは難しいものです。「こんな雰囲気が好き」という参考サイトのURLを2〜3つ掲載するだけで、イメージの共有が格段にスムーズになります。
「やりたくないこと」も書く:「派手なアニメーションは不要」「英語表記は使わない」「自動再生の動画は避けたい」など、「やりたくないこと」を記載しておくと、意図に反した提案を防ぐことができます。
RFPは5〜10ページ程度で十分です。A4用紙2〜3枚にまとめるだけでも、口頭だけで伝える場合と比べて、提案の質が大きく向上します。
良いRFPと悪いRFPの違い
最後に、良いRFPと悪いRFPの違いを具体例とともにお伝えします。これを参考に、御社のRFPをブラッシュアップしてください。
良いRFPの特徴
良いRFPには、以下のような特徴があります。
目的が明確:「問い合わせを月15件に増やしたい」のように、ビジネス上の目的が具体的に書かれている。
ターゲットが具体的:「群馬県内の30〜50代の中小企業経営者で、ホームページリニューアルを検討している方」のように、閲覧者像が明確。
予算とスケジュールが明示されている:制作会社が現実的な提案をするための情報が揃っている。
「解決策」ではなく「課題」が書かれている:「スライダーをつけてほしい」(解決策)ではなく、「トップページで複数の商品を効果的にアピールしたい」(課題)と書かれている。課題で伝えることで、制作会社がプロの視点で最適な解決策を提案できます。
悪いRFPの特徴
一方、以下のようなRFPでは、制作会社が良い提案をしにくくなります。
目的が曖昧:「とにかくかっこいいホームページにしてほしい」「今っぽいデザインにしたい」。何をもって「かっこいい」「今っぽい」と判断するかがわからないため、提案がブレます。
情報が少なすぎる:「ホームページをリニューアルしたいので見積もりをください」だけでは、制作会社は何を見積もってよいかわかりません。
解決策を指定しすぎる:「トップページにはスライダーを入れて、メニューはハンバーガーメニューにして、色は青と白で…」と具体的すぎると、制作会社の提案の余地がなくなり、プロの知見を活かせません。
予算が非公開:予算がわからないと、制作会社は「いくらの提案をすべきか」で悩み、結果として御社の期待と乖離した提案が返ってくる可能性があります。
「対話のきっかけ」としてのRFP
繰り返しになりますが、RFPは完璧な設計図である必要はありません。むしろ、RFPをきっかけにして制作会社との対話が始まり、その中でプロジェクトの方向性がより明確になっていくのが理想的な流れです。
良い制作会社は、RFPを受け取った後に「もう少し詳しく教えてください」「この点についてはこう考えていますが、いかがですか?」といった質問や対話を求めてきます。こうした制作会社は、御社の課題に真剣に向き合おうとしている証拠です。逆に、RFPの内容について何も質問せずに見積もりだけを出してくる制作会社には、注意が必要かもしれません。
用語メモ
ハンバーガーメニューとは、スマートフォン向けのWEBサイトでよく見かける三本線のアイコン(≡)のことで、タップするとナビゲーションメニューが表示されます。スライダーとは、トップページなどで複数の画像が自動的に切り替わって表示される機能のことです。
まとめ:RFPを書いて良い提案を引き出そう
この記事の内容を振り返りましょう。
- RFP(提案依頼書)は制作会社に自社の要望を伝えるための文書
- RFPを書くことで自社の要望が整理され、複数社の提案を公平に比較できる
- もっとも重要な項目は「プロジェクトの背景と目的」
- 予算とスケジュールは明示した方が、的確な提案を受けやすい
- 「解決策」ではなく「課題」を伝えることで、プロの知見を引き出せる
- RFPはA4用紙2〜3枚でも十分。完璧を目指す必要はない
- 参考サイトのURLを添えると、デザインの方向性が伝わりやすい
- RFPは「完璧な設計図」ではなく「対話のきっかけ」
初めてRFPを作成される方は、まず「なぜホームページを作る(リニューアルする)のか」「誰に見てほしいのか」「予算はいくらか」「いつまでに必要か」の4点を書き出すところから始めてみてください。それだけでも、制作会社からの提案の質は大きく変わるはずです。
「RFPの書き方がわからない」「作成のサポートをしてほしい」という方も、ぜひお気軽にお問い合わせください。御社のご状況をお伺いした上で、RFP作成のお手伝いも含めて、プロジェクトの進め方をご提案いたします。